1. はじまりー。

マリアはメイドだ。

昨今この「メイド」とやらの言葉は至る所で自然発生的に溢れかえっているわけで、メイドロボ、メイド喫茶、メイド歯科、カリスマメイド美容師、オーダーメイドバッグ、メイドインヘブン、メイドーブレンドコーヒー、はたまたメイドお化け屋敷やメイドの土産まである始末なほどに空前のブームと化してしるわけだが、しかしながらマリアは、そういうようなナンチャッテ派生な偽物メイドではなく、シンプルに優秀な、正真正銘のメイドさんなのである。しかも、17歳である。さらには、とても美しいのである。

しかしそおんなことはどうでもよくて、とにかく今日もマリアはいつものように掃除をしていた。休日ということもあり、ナギやハヤテも家に居た。

家の中を手際よく掃除する。ハヤテには庭の掃除をお願いしているので、部屋から部屋へと渡り歩いて、次から次に掃除する。埃を微塵も取りこぼさずに掃除を続ける。

書庫に入ったところで、ナギを見る。彼女はなにやら「ぷぷぷぷぷー。」と声を漏らしながらニタァって悦にひたりつつ、変なノートに夢中になって落描きしていた。

ふと目が合う。合った途端にものすごい形相になって噴き出しそうになりながら、必死にこらえるナギ。

「どうかしましたの?」

不思議に思ったマリアは訊くが、なんだかうまくたぶらかされて、「それより今夜は塩ラーメンで決定だ!マリア、頼んだぞ!私はこれから次のまんが大賞獲得すべく、ネーム作業で忙しいのだ!さらば!!」とかなんとか言いながら、ナギはさっさと自室へ行ってしまった。

どうにも釈然としないものの、まあナギも何かに必死になってがんばってることだし、それはそれでいいではないか、さあ今晩は塩ラーメンよ!とか思い、掃除を続ける。
ほどなくして、ハヤテが庭の掃除を終えて戻ってきた。彼はマリアに会うや否や、顔を赤らめすこし視線をずらしつつ、さりげなく言ってきた。「ええとその、たまには、そういうマリアさんも、とってもかわいくて魅力的だと思いますよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこで、初めて気付く、自分がいつのまにやら魔法少女?になってることに。ていうか、持ってるほうき、魔法ステッキに変わってるではないか。・・・ナギが妙に怪しく笑いをこらえていたのも、要はこれが原因だったのだ。

フフフしかしマリアも一流のメイドであると同時に一流のレディ。このくらいのことで全く動じたりしないのである。たぶん。・・・たぶん!!

「ハ、ハヤテ君、これはその、あれです、いやー見ちゃらめえ!」

ハヤテをどうにかうまく巻くマリア。どういうトリックでこうなったのかは分からないけどおそらく犯人はナギ。オシオキはあとでするとして、今はとにかく仕事が優先。ナギから是非に頼まれていた塩ラーメンをしっかり作るのに専念するのであった。

 

と、ここで時は少々さかのぼること数時間前。書庫。

ナギは、今日も今日とて気合いを入れて、まんがのネタをどうこうしようと画策していた。

しかし、ただ真っ白けっけのノートの前で唸ってるだけでどうにもネタが出てこない。何か、ヒントみたいなものはないものか?そんなん感じでいろんな本を手当たり次第にあさってみる。「こころ」、「斜陽」、「罪と罰」等のブンガク的なものから、「アイスクリームのおしい作り方」、「うん!この塩ラーメンがおしい!!」「おしいパスタ101選」などのグルメもの、果ては「マリア式メイドさん入門」や「和式便器における美しい座り方」、「チュパカブラに襲われたときの正しい対処法」などの実用書までも。・・・そうしてくうちに、ある奇妙な表紙の本を見つける。

表紙にでっかいツノつきガイコツがのっかってる、とっても悪趣味な本。なんだかオビも巻いてあり、そこには「あの火田●二郎も絶賛!!」などと書かれてたりとか。

「そうかそうか大絶賛か。大絶賛なら仕方ないよな、うん仕方がない。」そう言いながらさりげなく本を開いてみる。が、何も書かれていない。真っ白だ。

・・・これだけ禍々しき気配に満ちた本なれば、なんちゅうかその、もんのすごい、それこそ気が強くってしっかり者で有名なあの生徒会長・ヒナギクでさえも思わずおしっこちょっと出てしまうほどの、ビックリ仰天この上ない悪魔のテクニックとか解説してあろうかと思っていたのに、この本には、何も、書いてないのである。

「でもまあよい、この表紙の心意気は買った!私がこれを、真の悪魔のテクに相応しい素敵な内容で埋め尽くしてやろうではないか!!」

そういう具合に、手持ちのノートはどっかにポイして、今新たに発掘したこの頼もしきノートに、テキトーに落描きなんかをし始める。

表紙のアレっぷりも助長したのかナギは悪ノリしまくって、マリアが魔法少女になってしまっていやんあはんでハヤテ君みちゃらめぇ!とか、そんなしょうもないこと描いたりとかする。

「うへぇ、自分で描いてアレだけど、マリアにはこれはなんかもう、う、うう、うぷぷぷぷぷっ。」

なあんてプププとカマして描き込んでると、タイミング良くそこへマリアが現れて、彼女の姿を見てみたら、あらやだびっくり、自分が描いた通りの魔法少女な格好で掃除してるじゃあーりませんか!?しかも、本人気付いてないみたい。そのギャップとか、あと他にもいろんなギャップがありまくりなのに思わず限界突破で吹き出しそうになるも、なんとかこらえ、マリアの「どうしましたの?」の言葉を遮り、戦線離脱し自室へ移動するのである。

 

・・・ここでひとつ、わかったことがある。
どうやら、このノートってば、書いてみたことがホントのことになるみたい。

フフフそうであるなら、私がこの世界を、理想のそれへと導いてやろう!

とりあえずは、ほらアレだ、ヒーローだ!五人戦隊ヒーローだ!

さあそうすると、ロボも必要だよな、うん。ロボ・・・そうだ、
この三千院の別邸が変形合体とかすればいっか。身近だし。

よし、これで世界は安泰。

・・・あ、でも、敵がいないや。つくらないと。
敵・・・うーん、やっぱり史上最悪級の敵がいいよなー。悪の女首領とか?
具体的には、ええと、あの怖い金髪でいいや。丁度いい具合に怖いし。

そして、敵の切り札、それはどうでもいいけど、そうだ、この前読んだキン●マンに
出てたな、ベン●マンっていうの?あれでいいや。
吸い込まれると超●地獄とかに行っちゃうヤツ!

 

と、いったように、どんどんどんどんいらん設定書き連ねていく。

 

一通り描いたところで、晩ご飯の時間に。今日は、塩ラーメンだ。

たの〜しみ〜な塩ラーメン♪

・・・なはずだったのに、なんだか目の前にもられてるのは、もやしの納豆炒め四川風。異様に臭い。あと耳から血が出てきそうなほどに辛そうだ。

なんだマリアめ、あんな些細なことでこんなチンケな仕返しするとは、全く大人げないにも程がある!とか思ってマリアをギロッと睨んでみるに、マリアのほうは本当に純粋に満面の笑顔で「ナギの大好きな塩ラーメンですわよ?さあ、早くお食べなさい!さあ、さあ・・・!!」とかなんとか、こっちが付けいる隙を見せない。

こういうときは全部食べてしまわないとおしりぺんぺんされるのが通例となっているので、とにかく必死になって鼻つまみつつ、さらに水ガバガバ飲みながらなんとか食べ干す。

「ね、美味しかったでしょ?」マリアはそう言いながら上機嫌にルンルンスキップ踏みながら食器を下げていった。まるで、本当に美味いものを食べさせてあげられて喜んでるかのように・・・。

ほんのちょっと違和感を憶えるが、とはいえこれ以上マリアに関わるとさらなる痛い目見そうだし、とりあえずこのままそうっとしておこう、と、思うナギであった。




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つぎのおはなし。

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